Affinity Designer 2はIlustratorの代替え候補として真っ先に名前が上がるほど有名な優良のベクター編集ソフト。
Affinity Designer 2を検討するにあたって気になるのが、Illustratorのプロジェクトファイルを扱えるかどうかというのがひとつのポイントだと思います。
先に結論をまとめると、様々な効果や機能を保ったまま正確に読み込むことはできません。しかし、かなり高い精度で見た目を再現してくれました。
以下に詳しく検証内容と結果をまとめます。ベクター編集ソフト選定の助けになれば幸いです。
IlustratorとAffinity Designer 2
Affinity Designer 2はイギリスSerifが開発したベクター編集ソフト。グラフィックデザイン、UI/UXデザイン、アイコン制作、イラストレーションなど幅広い用途で活躍します。
Illustratorがサブスクでしか使えなくなってしまった現在、少しでも費用を節約したいベクター編集ソフトユーザーの受け皿のひとつとなっているのがこのAffinity Designer 2です。
Affinity Designer 2は買い切りで1万円前後と破格の安さで、セール時にはもう少し安くなることもあります。
【互換性検証】イラレのファイル(.ai)はAffinity Designer 2で問題なく開けるのか
イラレに搭載された全ての機能を網羅すると時間がかかりすぎてしまうため、各機能からいくつかの代表的なものを抜き出して以下画像のようなファイルを作成しました。
文字、パス、色、レイヤー、効果やオブジェクトを変形させるツールなど、機能ごとにざっくりまとめています。
ではこのファイルをAffinity Designer 2に読み込んでみましょう。
イラレのファイルをAffinity Designer 2に読み込ませた結果
イラレのファイルをAffinity Designer 2に読み込ませると、最初に「PDFオプション」という画面が最初に出ます。
PDF...?
これを見るとイラレに似たフリーソフトに時々あるPDFとして読み込まれるパターンかと勘ぐってしまいましたが、「開く」を押すと問題なく進めることができました。
こうして出てきたAffinity Designer 2の画面は次の通り。ひとつひとつのオブジェクトがきちんと生きているか確認していきます。
「縦書きテキスト」は非対応
さっそく画面左端の縦書き文字が息をしていませんね。代わりに横書き文字に置き換えられています。
どうやらAffinity Designer 2には縦書き機能そのものが無いようです。
「テキスト」は字間や字幅も引き継がれるが、文字タッチツールは不安定
バラバラに設定した字間や字幅はきちんと生きています。
一方、文字タッチツールでずらした文字はなぜか「アウトライン化していない文字」と同じ固まりになってしまいました。
加えて、「パス上文字ツール」で書いた円形の文字は1文字ずつバラバラのレイヤーに。
普通の横書き文字以外で書いたテキストはAffinity Designer 2にそのまま移せるとは限らないと考えたほうが良さそうです。ただし、再現できなかったテキストもアウトライン化されるなど何かしらの形で再現され、見た目が変わらないようになっています。
「複合パス」は生存、「グループ化」は強制解除
グループ化していたオブジェクトたちはグループが無かったことに。
一方で複合パスは問題なく機能しています。
「レイヤー」は正しい順序でコピーされる
レイヤーは順序含め問題なく生き残っています。
上述の通りグループ化がやられてしまっていたのでレイヤーの入れ子が機能しているのか心配だったのですが、グループ化として入れ子にしない限りは大丈夫そう。
「グラデーション」は難アリ
一見、線形グラデーションと円形グラデーションは問題ない見た目をしています。
しかし、線形グラデーションの塗りを確認してみると右端から左端まで透明度100%の表示になっており、情報が一致していません。
試しにグラデーションの左端を透明度0に設定すると、元々のグラデーションよりさらに透明優位なグラデーションに変化しました。なんで?
フリーグラデーションは見ての通り息をしておりません。
グラデーションについてはあまり期待しないほうが良いかもしれません。
「効果」は全滅したが、見た目は維持してくれる
「効果」まわりはAffinity Designer 2に読み込むと以下画像の見た目になりました。
ぱっと見ると、きれいにコピーできているように見えます。
しかし実際には、以下画像の通りほとんどの効果が複数のオブジェクトの組み合わせに分離していました。
「効果」は無かったことにされているので、Affinity Designer 2でパラメータを調整し直すことはできません。しかし、元々の見た目は保ってくれます。
「線」も見た目は維持してくれるが、線の扱いでなくなる場合も
破線は右端と左端が分離してしまいましたが、中央の破線は生きる残っています。
線のプロファイルとテクスチャは全て勝手にアウトライン化されてしまいました。(イラレで言うところの「パスのアウトライン化」)
線としての機能は部分的に失っていますが、ここも見た目は全て維持してくれていますね。
「画像」はリンク画像も埋め込み画像も全て埋め込まれる
画像はリンク画像だったものも全て埋め込まれました。
ここに関しては困る人は少ないのではないのでしょうか。
「ブレンド」「リピート」などオブジェクト系の機能は、見た目をキープしつつ機能は消失
オブジェクト系機能のうち、「ブレンド」「リピート」は全て単純なオブジェクトに置き換わったので、パラメータを設定し直すことはできません。イラレでいうところの「拡張」した状態ですね。
ちなみに、イラレの「ブレンド」に相当する機能はAffinity Designer 2に無いようです。
申し訳ないのですが、パターンはどのようになっているのかよく分からず。パターンの見た目は生きているのですが、パターンを編集する場所が発見できませんでした。
「エンベロープ(ワープ)」もアピアランスが削除されたので後からパラメータを設定することはできません。しかし、他と同じく見た目は維持されたまま、イラレで言うところの「拡張」がされています。
【結論】だいたい見た目は維持してくれるが、機能は大量に失われる
Illustratorのプロジェクトファイル(.ai)をAffinity Designer 2に読み込ませると起きることは主に以下の2点。
まとめ
- 「ドロップシャドウ」や「エンベロープ」など、多くの機能が消失してしまう。
- Affinity Designer 2に読み込んだ時点の見た目でアウトライン化・拡張されるので、見た目はほとんど維持される。
「ドロップシャドウ」「エンベロープ」など、本来ならアピアランス上で調整できるような機能のほとんどが消失します。オブジェクトタブの変形機能や、効果タブの機能は大部分が消えると思ったほうが良いでしょう。
しかし、消失してしまう機能を適用した状態でアウトライン化、拡張されて読み込まれるので、見た目自体ははほとんどイラストレーターのものと変わらない状態になります。
Affinity Designer 2はイラレの代替としてそのまま機能させることはできませんが、その安価な値段にしてはかなり丁寧にイラレのプロジェクトファイルを再現してくれる優秀なソフトです。
仕事で.aiファイルをやり取りするのにAffinity Designer 2を使うのは少し難しいかもしれませんが、自分一人で完結する用途であれば十分活用の余地がありそうです。
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Illustratorの代わりになる無料ソフトを一通り試してまとめているので、ソフト選びで悩んでいる方は是非参考にしてみてください。