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ダサいと言われる三井住友カードの券面の実物を見たら面白かったという話【レビュー】

クレジットカードの券面というのは、カードの機能・中身が他とほとんど変わらない中で、ブランドや印象を分かりやすく生み出せる大切な要素。三井住友カードのデザインは2020年に変わりました。

この新デザインをネット上で見たときはあまり好みではなかった僕が最近実物を手にしました。実物を見たのをきっかけに、デザインについてちょっと面白いなと思ったことがあったので共有したいと思います。

まぐです。デザインや映像を扱う東京在住20代のフリーランス。Twitterはこちら

そもそも三井住友カードの券面はどのようなものだったか

三井住友銀行といえば三大メガバンクの一角を担うデカい銀行で、クレジットカードの発行会社としても日本の中では長い歴史を持っています。日本で最初にVISAカードを発行した銀行だったとか。

そのカードの券面は飾り枠にパルテノン神殿があしらわれた、「クラシック」という言葉が似合うような高級感あるデザイン。長い歴史を持つ三井住友銀行の背景に沿ったデザインですね。

しかし、2020年2月3日に三井住友カードのデザインが変更。それも印象が変わるかなり大幅な変更でした。

画像は公式サイトに掲載されている券面の画像を並び替えています

クラシックで高級感ある感じから一転、具体的なモチーフ(旧カードでいうパルテノン神殿)が無くなり、シンプルで現代的な感じに。

新デザインを公式には以下のように説明しています。

新しいカードには、未来を映し出す光と、
足元を照らす光をデザインしました。
お客さまが歩む希望ある未来を、
輝きを放つ1枚のカードに表現しています。

https://www.smbc-card.com/camp/newcard/index.html

言おうとしていることは分かるし、このテーマ性は新しいデザインの説明としても違和感なく十分です。しかし、ユーザー側から見ると「①アメックスのような方向性の『信用』『ステータス』を表した高級な感じ」から「②そのへんのよくあるクレジットカードのデザイン」に変わったわけで。

(クレジットカードの券面デザインを分類してくださいと言われたらざっくりと上に挙げた①②の2種類になりそうですね。以下、①前者は「クラシック」②後者を「現代的」と呼ぼうと思います)

このデザインが発表された時ネット上では割と否定的な反応が多かった。否定的な意見のうちの多くは抽象的な「ダサい」という感想。次に多かったのは、新デザインの表現自体は理解しつつも「現代的なデザインよりクラシックな方面のデザインでいてほしかった」といった感じ。統計をとったわけではなくあくまで僕の肌感です。ちなみにTwitterでハッシュタグ「#新デザインの感想」と検索するとTwitterユーザー達の色々な感想を覗き見ることができます。

自分が三井住友カードを持つことになった

自分自身もあまり新デザインは好きではなかった立場です。僕の中で銀行系カードといえば「信用」に命を賭けている印象。三井住友銀行(カード)に求める「信用」の印象と、新しい現代的なデザインから受ける印象は違っているように見えたからです。

そんなこんなでカードのデザインが変わって1年半以上経った今、三井住友カードを作る機会があってカード実物を初めて見ることになりました。その結果、最初にカードの券面デザインに対して抱いていた感覚とちょっと違う、というかオモシロイと思った部分があったのでここで共有したいと思います。

カード実物のデザイン

僕が作ったのは『三井住友ゴールドカード(NL)』です。

1年で100万使うと年会費永年無料になったり、毎月5万円まで1%の還元率でSBI証券に積み立てられたりするところが優秀なカード。券面の機能として特筆すべきは番号がどこにも記載されていないこと。表面には「ICチップ」と「VISAのロゴ」さえあれば機能するカードになっています。

放射状の光線、もしくは割れたガラスのような見た目の券面であることは最初から分かっていました。この券面について一番気になっていたのは、光の反射方向が異なるように見える放射状の集まりをどのように表現するのかという点。web上に表示される券面デザインをみると、次の画像のように2種類(2方向)の反射を確認することができます。

ヘアライン加工等々でこのような見た目を現実のものすること自体はできると思われますが、発行する全てのカードに加工を施すにはかかるコストの高さからしても非現実的でしょう。(年会費が10万するようなカードは置いといて)

ついに実際に届いた実物はこのような感じでした。

写真の通り、(近くで見なければ)この反射がある程度表現されているんですよね。

これ、よく見ると...

白インク・・・?

カード本体の色は光沢のある金色。その上に緑色の印刷/印字をしているのは分かりますが、それに加えて光の反射が変わる表現を施したい部分に上から白インクを吹いているように見えます。その白インクも光線が集まる点から放射状にインクが目立たないよう徐々に薄くなっていきます。

  • 白インクを吹いていないエリアはそのまま光を反射する。
  • 放射状に白インクを塗布されたエリアは光の具合に関わらず光が反射している風のプリントとして機能させることで見え方を変える。

この2種類で異なる光の反射を再現しようとしている模様。

角度によっては微妙に見えたりもします。明るい光源がなければのっぺり見えてしまったり・・・

・・・光が反射する方向そのものは変わらないで、モノが写り込んでしまえば主張の薄い白インクは打ち消されます。

ゴールドカードのデザインを適当に検索してもらえるとすぐ分かると思うのですが、ゴールドカードに白インクはなかなか珍しいです。例えばエポスカードの旧デザインの場合、カード本体の金色を一番明るい色として、より暗い色のインクを印刷してグラデーションをつけています。他のカードもだいたいはこのように装飾をしているはず。

そうそう。VISAのロゴマークにヘアライン加工が施されていることを評価している声がネット上で散見されるのですが、これは三井住友カードのデザインではなく、恐らくVISA側が提供しているものでしょう。無料で持てるエポスカードなどでも同じロゴを見ることができます。

ちょっとした考察とデザインのこと

画面上で見る新デザインは首を傾げていたものの、実際に手に取ってみるとデザインの工夫が伝わってきました。

現代的なデザインにしようものなら基本的にはKyashカードやエポスカードのように全面を単一色にしてしまうのがトレンド。確かにカッコいいことにはカッコいいかもしれないけど個性の無い色つき板になってしまうので、三井住友カードがこのようにひねったデザインにしたことにも意味はあるのかもしれないな、と実物を手にしてからだんだん思うように。

左:新エポスカード 右:Kyashカード

人間はデザインが変わるとまず嫌がるようにできている生き物であることは有名です。iPhoneの画面UIがいOS6のリッチデザインからiPS7フラットデザインに変わった際は批判殺到でしたし、レクサスのフロントグリルがスピンドルデザインに変わったときも批判の声は多かったです。しかしiPhoneのUIも現在では完全に馴染んでいるし、レクサスも徐々に受け入れられている印象です。デザインが「良いか悪いか」よりも「見慣れたか見慣れていないか」という物差しでで批判されることも多々あるというワケですね。

今回の三井住友カードももしかしたら同じ理由で批判されているだけで、数年後には受け入れられているのかどうかもわかりません。しかし、iPhoneの画面UIが変わった前も後もAppleの先進的なイメージは変わらないし、レクサスの「高級感」も変わりません。それに比べて今回のカードの場合は「クラシック」から「現代的」なイメージへと、銀行のブランドイメージの根っこまですり替えてしまうような変更にも見えるんですよね。これが10年後にどのような評価を受けているのかちょっと楽しみな気持ちで見ています。

以上、三井住友カードのデザインを実際に手にした上での感想でした。クレジットカードのデザインって考え始めるとなかなか面白いですよね。いつか券面デザインの仕事もやってみたいな。

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