ここ数年増えている「耳を塞がないタイプのイヤホン」。
中華ノーブランド品を除くと1万円を切るものがはほとんど発売されていないなか、8000円以内で購入できる「SOUNDPEATS GoFree2」たるイヤホンが異彩を放っています。この記事ではGoFree2の使用感、良い点悪い点とともに正直な感想を共有します。
先に結論だけまとめると、筆者が耳を塞がないイヤホンで満たしたい欲求を低価格で満たせるイヤホンでした。耳を塞がないイヤホンがほしい理由を持っているかたなら、このイヤホンが良い選択肢となってくれるはずです。
この記事では忖度なし、添削なしを条件にGoFree2をご提供いただいています。金銭の授受はありません。
SOUNDPEATS GoFree2はBluetooth接続の耳を塞がない耳かけイヤホン
まずはSOUNDPEATS GoFree2の基本スペックを簡潔にまとめます。
- 耳を塞がないタイプの耳にかけるイヤホン
- 価格は約8,000円
- LDACコーデック対応・ハイレゾ認証取得
- 16.2mmダイナミックドライバーを搭載
- 専用アプリでEQ調整可能
- ラムダ型音響空間2.0を搭載
- 肌に優しいシリコン素材
- マルチポイント機能で2台まで接続
- ENC通話ノイズキャンセリング
- Bluetooth5.3
- 低遅延ゲームモード
- 最大35時間分の充電ケース内蔵バッテリー(イヤホン本体の連続再生は公称9時間)
上の画像がGoFree2の本体。スピーカーの穴は2箇所についていて、本体の大きくなっている部分に空いている穴が1つ目。これが中高音を担当するメインの穴です。
2つ目の穴は側面の部分についています。これは低音(バスレフ)の役割を果たします。これを耳に掛けると、スピーカーの穴が自然に耳道(耳の入口)の前に固定されるように設計されています。
SOUNDPEATS GoFree2の一番の特徴は、8000円以下のかなり安い価格帯でありながら耳を塞がないタイプのイヤホンであること。
耳を塞がないイヤホンで1万円を切るものは中華ノーブランド品(個人が中国から仕入れて販売しているようなもの)がほとんどを占めており、ブランドを名乗って売りに出されているものはほとんどありません。下手したらGoFree2だけ・・・?
耳を塞がない耳かけワイヤレスイヤホンだけが解決してくれる用途がある
YouTubeやポッドキャスト、オーディオブックなどを聞き流しながら作業したいが耳は塞ぎたくない時にこのイヤホンが大いに活躍します。
たとえば料理中や掃除中。スピーカーだと換気扇や掃除機に音がかき消されてしまうところ、このイヤホンなら常にクリアに聞くことができます。
他には仕事場などの人に話しかけられる環境。周りの音が聞こえないと応対をしづらいだけでなく、完全に耳の覆ったイヤホンをしているのを見るだけで「話しかけないでオーラ」があなたの周囲を埋め尽くしています。
ノイズキャンセリング対応カナルイヤホンでパススルー機能を使おうとも考えたのですが、音の聞こえ方が不安定なこの機能で包丁やハイターは使いたくありません。
となるとGoFreeのような耳を塞がないイヤホンがこのような問題を解決してくれます。また、これはカナル式などの普通のイヤホンでは替えの効きにくい問題でもあります。
GoFree2は単純なイヤホンとしてのスペックは低く見える
カタログスペックだけを見るとGoFree2の性能・機能は高く見えますが、実際に使ってみると完璧とは言えません。普通のイヤホンと比較して気になったところを以下にまとめます。
【音質▶良くない】音楽鑑賞など音質を求める用途に耳をふさがない耳掛けイヤホンは向かない
音質は同価格帯のインナーイヤー型(カナル型)のイヤホンには遠く及びません。例えるなら、テレビの内蔵スピーカーの音質から低音域の表現力を上げたような具合です。
しかし、音質が悪いのはGoFree2のせいではなく、耳を塞がないイヤホン全般の宿命です。イヤホンと同じような小さな本体でインナーイヤー(カナル)イヤホンのように耳を密閉することができない環境でいい音質を作る事自体に無理があります。なんなら低音域が聞こえるようになっているだけでもGoFree2は頑張っているほうだと考えていいでしょう。
GoFree2はLDACコーデックに対応していることを売りの一つにしていますが、これが音質の良さが直結するわけではありません。
しかし、耳掛け型という制約の中でも可能な限り音質を挙げようとする努力は垣間見えます。一般的なスピーカーでは、スピーカー本体の裏側に向かって出る音を使って低音を増強しています。GoFree2では、耳にかけないイヤホンでスカスカになってしまいがちな低音域を出すため、このスピーカーの裏側に向かって出る音を増幅するための構造を小さな本体の中に丁寧に設計していることを、「ラムダ型音響空間2.0」と名付けてまで宣伝しています。
良い音質を求めているのはごく一部のユーザーに過ぎず、今売られているイヤホンの音質はほとんどの人にとってオーバースペックであるのも事実です。
【音漏れ▶漏れる】電車・バスや静かな公共の場では使えない
当然ですが音は相当小さく設定しない限り普通に漏れます。
人が密集した公共交通機関や美術館のような静かな公共な場では迷惑になるので活躍する場所は選びます。
人の少ない野外でランニングする程度であれば問題になることは少ないでしょう。
【遅延▶大きい】Bluetooth接続はシビアな対戦ゲームや音ゲーでは使えない(カジュアルゲーならOK)
遅延の少ないBluetooth 5.3を採用しており、GoFree2独自の「低遅延ゲームモード」も搭載しています。(専用アプリから設定可能)
しかし、アーケード音ゲーとPCでのFPSゲームを嗜んでいた筆者がGoFree2を使った結果、低遅延ゲームモードでも無視できない大きな遅延を感じました。しかし、数年前の古いBluetoothイヤホンと比較するとかなり改善してきており、カジュアルなゲームなら違和感なく楽しめる程度に収まっています。
昔のバージョンと比較すればBluetooth 5.3で遅延が少なくなったことは確かである一方、VALORANTなどのシビアな対戦ゲームや、全ての音楽ゲームでの利用はおすすめできません。
以上のようなゲーム用途でワイヤレスイヤホン(ヘッドホン)を利用したい場合は、独自規格のドングルで接続するもの、例えば「Logicool」ブランドのヘッドホンや「Soundcore VR P10」を利用する必要があります。
【サイズ▶大きい】バッテリー内臓の収納ケースは大きめ
収納ケースの大きさは持ち運ぶ人なら気になる人もいるでしょう。比較用にAnkerのAnker Soundcore Life P3と並べてみました。
高さはほぼ同じ程度ですが、面で見ると倍くらいの違いがあります。
GoFree2のデメリットは耳を塞がないイヤホンに求める機能の妨げにならない
ここまでGoFree2の性能の低さを高々と並べましたが、これらのデメリットは正直あまり問題ありませんでした。なぜなら、「耳を塞がずにYouTubeやポッドキャストなどを聞き流しながら作業したい」など、筆者が耳を塞がないイヤホンで満たしたい欲求を邪魔しなかったからです。筆者に限らずとも、多くの人が耳を塞がないイヤホンに求めている機能・用途に対して上に挙げたデメリットは悪さをしないのではないでしょうか。
腰を据えて本格的な音楽鑑賞したいわけでも、対戦ゲームをしたいわけでも、電車の中で使うために耳を塞がないイヤホンを欲しいわけでもないのです。
本当に欲しいのは軽さやバッテリー持ちなど、利便性や長時間つけていても疲れないような工夫です。GoFree2はこのあたりをかなりいい感じに作り込んでいます。詳細を以下にまとめます。
【装着感▶良い】柔らかいシリコン素材で装着感はラク
耳を塞がないイヤホンで懸念点となるのが装着感。マスクのゴムで耳が痛くなってしまうように、耳に掛けた事による部分の圧迫感や重さで不快差があると使いたくありません。
この点についてGoFree2は丁寧に対策されています。耳に掛ける部分の全体がシリコン製となっており、しなやかに曲がるようになっているだけでなく表面も若干の柔らかさがあります。
筆者の場合は半日着けていてもまったく不快感はありません。走りながらでもそこまで気になることはなく、イヤホンの位置がずれていくこともありません。
【同時接続可能】8000円を切る価格でマルチポイントが使える
地味ながら素晴らしいのが、この価格で同時に2つの端末に接続できるマルチポイント接続に対応している点。
切り替えはそこまで高速ではなく、5秒以上かかることも普通にありますが機能として搭載されてきちんと使えているだけでもかなり便利になるはずです。
筆者の場合はPC↔iPad間で接続しています。作業中はPC、トイレなどで席を立つ時にながら聞きできればいいならPCのまま、席を立つ時に画面も見たいときはiPadを持ち出してサクッと切り替え、という使い方をしています。
耳が蒸れない
耳掛けタイプのイヤホン全般に言えることですが、ヘッドホンやカナルイヤホンのように耳が蒸れるようなことはありません。当然といえば当然ですが、イヤホン選びで忘れてしまいがちなポイントなので一応記載しておきます。
GoFree2の真髄は価格にある
上でもまとめた通り、ただ単純に鑑賞用イヤホンとして考えるなら良くない点があるものの、これらの良くない点は筆者が耳を塞がないイヤホンで満たしたい欲求を邪魔しすることはありませんでした。また、筆者に限らなくても耳を塞がないイヤホンで満たしたい欲求を満たせるケースは多いのではないでしょうか。
そして何よりもGoFreeの価値はその価格にあります。GoFree2の価格が「耳を塞がないタイプのイヤホンであんな用途を試してみたい」ともっと気軽にできるようハードルを下げてくれています。
耳を塞がないイヤホンがほしい理由を持っているかたなら、このイヤホンが良い選択肢となってくれるはずです。
筆者が屋外で使っているイヤホン