法人の設立時には必ず電話番号を提出する必要があります。
それは法人設立の手続きだけではなく、法人銀行口座の開設や会計ソフトの登録時などでも使う番号です。
ここで悩むのが、マイクロ法人のために電話番号を取得する必要はあるのか。この記事では実際にマイクロ法人を運営している筆者が経験をもとに共有します。
先に結論だけ述べると、「プライベートの電話番号を使ってもいいが、安いIP電話か携帯電話をとっておけば精神衛生上良い」です。
最初に確認したいマイクロ法人の大前提
本題に入る前に、大前提を確認します。
電話番号を取得する/しないに関わらず、マイクロ法人を運営している私たちの目的はひとつ。
それは「経費や税金を可能な限り減らして手元に残るお金を増やすこと」です。
手間とお金を天秤に掛けた結果お金を使うケースもあるものの、基本はこの目的を大前提に話を進めていきます。
法人で電話番号を取ったほうが良いとされる理由とその実際
法人を設立する際には法人用の電話番号、とりわけ固定電話を取ったほうが良いとする記事が多くヒットします。
しかし、ひとり社長のマイクロ法人でも同じとは限りません。実際にマイクロ法人を3年以上運営した僕の所感を以下にまとめます。
【いらない】法人を登記する際に電話番号を提出する必要があるから
まず、会社設立の際には税務署などに届ける書類に会社の電話番号を書かなければなりません。
しかし、法人用として契約した電話番号を届け出る必要はありません。会社を建てると会社名や会社の住所は公開されますが、電話番号は公開されないため番号が人に漏れる心配もなし。
プライベートのもので普通に通るので、法人登記は電話番号を作る理由になりませんでした。
【いらない】固定電話番号なら信頼を得ることができるから
法人設立の際に固定電話番号を取得するべきだとする意見のうち特によく見かけるのが、「信頼を得られるから」というもの。
これについて皆さんにお聞きしたいのですが、
「この会社は固定電話だから間違いない!」とか
「この会社は携帯電話番号だから信用ならない!」などと感じたことはありますか?
少なくとも僕はありませんし、そうやって判断している会社さんの話も聞いたことはありません。
僕は固定電話を取りませんでしたが、銀行(GMOあおぞらネット銀行)の開設も問題なく可能でした。法人口座開設の難しさと選び方については以下記事で解説しています。
【人による】プライベートと仕事を切り分けることができる
ここは必要不要というより取り回しの問題ですが、プライベートの電話と仕事の電話番号を切り分けると精神衛生上ラクになる部分は実際に感じています。
プライベートの電話番号に電話がかかってきたら「はい」「もしもし」と返しますが、仕事の電話番号にかかってきたら仕事モードのマインドですぐに「はい、●●合同会社、代表の□□です」と言える安心感は小さくありません。
【人による】音声の品質に差が出る
IP電話と比較して携帯電話は帯域(よくVoLTEなどといわれているもの)の関係で音質が良く、固定電話なら電波を使わないのでさらに安定しています。
お客様や取引先と頻繁に電話をするのであれば、音声の品質がいい電話番号を取ったほうが良いとの意見があります。ここの判断は人によって分かれそうなところ。
登記や年金事務所、銀行などの登録や連絡にしか電話を使わない業態だったので関係ありませんでした。また、最近はIP電話の音声もそこまで悪くないというのが個人的な感想です。
法人で電話番号を用意する方法は3パターンある
仮に法人用の電話番号を取るとしたら、大きく分けて3通りの取り方があります。
- IP電話番号を取得する
- 固定電話番号を取得する
- 携帯電話番号を取得する
IP電話 | 固定電話 | 携帯電話 | |
---|---|---|---|
電話番号 | 050から始まる | 市外局番から始まる | 090/080/070/060 から始まる |
通話品質 | 110円から(後述) | 1,280円から(後述) | 0円から(後述) |
移動性 | Webやアプリ上でどこでも使える | 原則移動できない (例外あり・後述) | 携帯電話 |
機器 | 携帯電話端末 | 原則固定電話 (携帯電話端末でも・後述) | 携帯電話端末 |
通話品質 | 普通 (LINEの通話機能レベル) | 高い | 高い |
電話番号とはいってもそのサービス内容は様々。昔は数千円かかった携帯電話番号はほぼ0円で取得できるようになりましたし、家において使うイメージのある固定電話もスマホで扱えるサービスが出てきています。
これを念頭に、それぞれの契約方法の強みとサービスをまとめていきます。
「IP電話」は安価で最も無難な選択肢。おすすめはLa La Call
IP電話は050から始める電話番号。元々使っているスマホにアプリを追加する感覚で簡単に使うことができます。
2024年までは楽天の「SMARTalk」という維持費無料の優秀なIP電話サービスがあったのですが、残念ながらサービス終了に。これに伴い、完全無料で維持できるIP電話は無くなってしまいました。
執筆時点で最も安く維持できるIP電話サービスは実質「La La Call」か「My050」の2択になっています。
以下表を見ると分かる通り、維持費はわずかにMy050が優勢、通話料はLa La Callが優勢。
La La Call | My050 | |
---|---|---|
初期費用 | なし | 550円(設定費) |
1ヶ月あたりの維持費 | 110円(月額基本料) | 92円(550円/6ヶ月) |
携帯電話(国内) 通話料 | 8.8円/30秒 | 19.80円/1分 |
固定電話(国内) 通話料 | 8.8円/3分 | 10.56円/3分 |
050IP電話(有料提携) | 8.14円/3分 | ? |
維持費の差は1年あたり220円とわずかなので、僕はLa La Callをおすすめします。
通知や支払いについて何か確認や連絡がある場合には、数分単位で年金事務所などと電話することもあります。こういった時に通話料が少ないほうが焦る必要もなく安心です。
「固定電話」番号はスマホでも取得可能に、ただし高額
「家や事務所でしか使えない」「契約、解約が大掛かり」などと、契約が一番面倒に見える固定電話。
しかし、今ではスマホから固定電話番号を使える「03Plus」なるサービスが出てきています。
ただし、IP電話や携帯電話と比較すると費用は高め。
初期費用 | 5,000円(年払い契約で3,800円) |
維持費(1ヶ月) | 1,280円(基本料金) |
通話料(専用アプリから発信) | 20円/30秒 |
最低でも月額1,280円とIP電話や携帯電話と比較するとかなり高額なので、マイクロ法人の「手残りを増やす」という目的にはまず合致しません。
「携帯電話」番号はほぼ無料で用意できるが細かい条件も
携帯電話番号をできるだけ安く持ちたいのであれば、現状はKDDIが運営している「povo」一択です。
「povo」は基本料無料で携帯電話番号を割り当ててもらえます。
povoは180日間も課金せずにいると解約されてしまうので、実際には完全な無料ではありません。半年に一度は一番安いプランを課金して維持しましょう。
常設プランなら330円(24時間使い放題)。特設プランなら178円で0.3GB&ローソンの飲み物が貰えるセットもあります。
ただし、携帯電話側は2つ目以降の電話番号を使えるかどうかを確認する必要があります。
ただし、いくつか確認しなければならないポイントがあります。
法人用の電話番号をpovoで確保する場合の注意点
- スマホが同時に2つ目以上の電話番号を使えるのか
- スマホにSIMをインストールできるのか
- 法人名義の契約はできない
ひとつのスマホで複数の携帯電話番号を使うには、スマホがその機能に対応している必要があります。デュアルSIMと呼ばれる機能です。iPhoneであれば、iPhone XS・iPhone XR以降で対応しています。
さらに、SIMをインストール場所が余っているかも念の為確認しましょう。デュアルSIM対応スマホには「物理的なSIMカード1つ、eSIM1つ」など、数に制限のある場合もあります。povoは契約の際にeSIMと物理SIMを選べるので、ここの選択を間違えないようにしましょう。
また重要なのが、povoは法人名義での契約ができないこと。一度個人名義で契約して建て替えるひと手間は少し面倒ですね。
個人名義で契約しても、利用実態が法人としてのものであれば問題なく法人の経費になるはずです。もちろん判断は自己責任で。心配であれば専門家に聞きましょう。
【結論】基本的には電話番号を持たなくてもなんとかなる
上で紹介した通り、法人登記やネットバンクの法人口座開設などで登録する電話番号に個人のものを使っても問題ありません。
よって「仕事で取引先やお客様との連絡電話番号を多様でもしない限りは個人の電話番号をそのまま使ってしまっても良い」というのが、実際にマイクロ法人を3年以上運営している僕の結論です。
銀行や税務署などからいきなり確認の電話がかかってきた際には驚いてしまうかもしれませんが、手残りを最大化したいマイクロ法人社長ならこれくらいは許容できるストレスでしょう。
法人用の電話番号をとってもいいケース
業態によっては電話番号を取得しても良いケースがあります。
- 取引先やお客様と頻繁に通話する場合
- ネットショップなどで電話番号を誰でも見られる場所に開示しなければならない場合
言うまでもありませんが、頻繁に電話を使う場合はプライベートと法人の電話を分けたほうがいいですね。他にも、to Cのお仕事でお客様がお年寄りの場合には、古い価値観に合わせて少し高額でも03plusの固定電話番号を取得する価値があるかもしれません。
そのほかには物販系ビジネスの場合、ネットショップに電話番号を載せなければ出店できないケースもあると思います。この際には仕事用の電話番号が友好です。
【筆者の結論】法人用の携帯電話番号を運用することに
筆者はプライベート用の電話番号に法人としての電話がかかってくるのが精神衛生上あまり気持ちよくないので、povoを契約することにしています。
法人の電話番号が携帯電話番号になるということですね。
僕の場合、法人の電話番号を使うのは法人の届け出や銀行の登録などのみ。取引先など仕事の連絡では使わないので携帯電話番号で十分と判断しました。
マイクロ法人を運営する皆さんの参考になると幸いです。