マイクロ法人や一人社長(人によっては二刀流)で悩みの種となるのが会計や各種申告のやりかた。節税したくて法人化したから税理士にお金を使いたくないし、会計ソフトもできるだけ安く済ませたい。
会計はどのように動かすのが一番安上がりになるのか考えながら実際に数回のの会計と決算、法人税申告を終えた筆者は、現時点でfreeeが一番良いとの結論に落ち着いています。この記事でこの結論に至るまでに考えた事や比較材料をまとめて共有します。
2024年7月のfreee値上げを記事に反映しました
mag(まぐ)です。マイクロ法人(いわゆる二刀流)を立ち上げたフリーランスのデザイナー。仕事が支障が出ない範囲できちんと節税したい。
マイクロ法人は会計がほとんどいらない
そもそもマイクロ法人は毎日のように大量の取引をする企業とは異なり、1ヶ月あたり数個~十数個の収入と支出をまとめるだけで十分。社員は社長である自分ひとりだけだから、最近のクラウド会計ソフトによく付属している給与管理機能は不要。勤務時間の概念もないので勤怠管理機能も不要です。
会計ソフトに求めるのは本当に最小限の機能です。
マイクロ法人の会計に必要な機能だけをできるだけ安く済ませるための会計ソフト探しが始まりました。
freee・マネーフォーワード・弥生会計オンラインは料金もサービス内容も違う
クラウド会計ソフトを調べた結果、最後まで候補に残ったのは「freee会計」「マネーフォワードクラウド」「弥生会計オンライン」。
「弥生会計」は「初年度無料、次年度以降は割高」という料金体系が好みでないので除外しました。
→2024年7月にfreeeの値上げを受けて弥生会計が最安に躍り出ました(年間30,590円 税込)。これを受けて弥生会計も検討のテーブルに載せています。
会計ソフトは1度使い始めてから他のサービスに変えるとデータの移行が面倒。だから、『1年無料で使ってもし合わなかったら他のサービスに変える』ようなやり方をせず、1発で決めたいところです。
【価格比較】freeeとマネーフォワードの価格は横並び、弥生会計オンラインが安く見える
マネーフォワードの最安プランは「スモールビジネスプラン」で年間39,336円。
freeeの最安プランは「ミニマムプラン」で年間26,136円でしたがこれは廃止に。2024年7月からは「ひとり法人プラン」に変わり、年間39,336円に超大幅値上げ。
freeeの値上げによって、マネーフォワードとfreeeは同価格と足並みを揃える形になりました。
公式サイトの価格はどのサービスも税抜表示が常態化しているので要注意です。
マネーフォワード(スモールビジネスプラン)と弥生会計オンライン(セルフプラン)でログインできるユーザー数は3人まで、freee(ひとり法人プラン)は1人なので注意が必要。僕の場合は完全1人会社なので問題ありませんでした。
freee 一人法人プラン (最安プラン) | 弥生会計オンライン セルフプラン (最安プラン) | マネーフォワード スモールビジネスプラン (最安プラン) |
---|---|---|
39,336円 | 30,590円 | 39,336円 |
料金プランを見る | 料金プランを見る |
マイクロ法人ならどのサービスでも最安プランで十分
マイクロ法人ならfreee・マネーフォワード・弥生会計オンラインともに最安プランでOK。
freeeは実際に一年間自力で会計をして問題なかったので、マイクロ法人で使う会計機能はきちんと揃っているはずです。マネーフォワードも公式サイトの機能一覧を確認する限り大丈夫。
【機能比較】実はほとんどの機能はいらない
料金が違う分変わるのが機能。
前提として、どのサービスを使っても会計機能は十分です。会計サービスだから当たり前です。一方、サービスによって差が出るのは主に人事労務(従業員管理)系の機能。元々は複数人を雇って運営している会社向けの従業員管理機能ですが、一人社長の場合も年末調整や社会保険周りの機能を活用できます。
マネーフォワードはこの人事労務機能が最初から使えるようになっています。値上げ前のfreee(ミニマルプラン)でこの機能を使いたい場合は「freee人事労務」を追加で契約する必要がありました。
しかし、2024年7月の値上げをきっかけに、freeeでも人事労務機能が標準に。freeeとマネーフォワードの価格と機能の両方がほぼ横並びになりました。
freee 値上げ前 (ミニマルプラン) [2024年6月まで] | freee 値上げ後 (一人社長プラン) [2024年7月から] | 弥生会計オンライン (セルフプラン) | マネーフォワード (スモールビジネス) | |
---|---|---|---|---|
年払い価格(税込) | 26,136円 | 39,336円 | 30,590円 | 39,336円 |
人数 | 3 | 1 | 3 | 3 |
ORC (撮影した領収書の 読み取り機能) | ◎可能 スマホアプリあり | ◎可能 スマホアプリあり | ◯可能 | △上限5件/月 |
年末調整 | ✗ | ◯ 書類申告限定 電子申告不可 | ✗ | ◎ |
社会保険の 書類作成/申請 (算定基礎届の 提出など) | ✗ | ◯ 書類申告限定 電子申告不可 | ✗ | ◎ |
電子契約機能 (一部の人向け) | ✗ | ✗ | ✗ | ◎ |
メール/チャット サポート | ◎ | ◎ | △2ヶ月のみ | ◎ |
電話サポート | ✗ | ✗ | △2ヶ月のみ | ✗ |
機能一覧ページ | 機能一覧ページ |
特筆すべきは撮影したレシートや領収書を自動で読み取って仕分けしてくれるORC機能。各サービスが対応していますが、マネーフォワードの場合は5件/月のみしか利用できません。
次に確認したいのはfreeeの値上げとともに追加された年末調整や社会保険まわりの機能。一見便利そうにも見えますが、そもそも社会保険や年末調整の書類作成は少し勉強すれば自力でも簡単にこなせます。少しの時短にはなるものの、弥生会計オンラインやfreeeの値上げ前の機能だけでも十分なのです。僕の場合に限らず、「マイクロ法人」という名のもとで法人運営している殆どの社長さんにも不要なはずです。
また、勤怠管理やマイナンバー管理といった従業員管理系の機能はそもそも使わないので表から除外しています。
【まとめ】
①マネーフォワードはレシート読み込みが月5枚までしかできない
②弥生会計よりfreeeとマネーフォワードのほうが高機能。しかし、これらは時短にはなるものの必須の機能ではない。
しかし、実際に1年目の決算期を迎えたときに助かった重要な機能がfreeeにはありました。次項で解説します。
マネーフォワードのは電子契約ができるサービスが含まれています。個別で契約すると安くないので、もしこれを利用したい場合にはマネーフォワードも選択肢になるかもしれません。
現状、税理士なしで法人税申告を終わらせるならfreeeが圧倒的に有利
恥ずかしいことですが、僕が法人を立てて会計ソフトを選んでいた当初は法人税申告の書類作成がとても複雑で難しいものだとは知らず、年末調整や標準月額、社会保険の手続き同様に自力でなんとかなるものだと思いこんでいました。
税理士なし&知識なしで法人税申告をできるものだと思っていた法人1年生のかた〜!法人税申告を今知ることができてラッキーです、この記事を読んでどうか僕の二の舞にならないようにしていってください。
実際のところ、法人税申告に必要な書類は十数枚もあります。(大きな法人ならもっと必要らしい)
さらに、法人の実態や資金状態によって書類の内容も変わるから必要書類から調べないといけないというダブルの地獄。法人税申告は自力でネットで調べてどうにかなるものでは無いを思い知りました。実際にググると「小さな法人でも法人税申告は税理士を使って」と紹介しているサイトが多いと思います。(ごく一部、自力でこなしている猛者もいらしゃいます)
「freee申告」が超強力だった
これが税理士なしでもfreeeの中でどうにかなってしまった、というのがfreee最強の理由。「freee申告」という法人税申告ができるサービスが別料金で用意されています。
1年度あたり27,280円で、税理士に頼むのと比較すればかなり安上がり。→2025年から32,780円に値上がりとなります。
自分の法人の状況に合わせて必要な書類を簡単に絞り込めるし、書類の9割程度はfreee会計入力された数字が勝手に反映されるしでとても助かりました。
freeeのスタッフの方にfreee法人税申告のオリエンテーションをしていただいた時に、2年目の申告が終わったら3年目からは2年目の書類を参考に自力で申告してもいいかも、と提案されました。今後試してみようと思います。
マネーフォワードの場合は法人税申告に特化した別サービス「法人税の達人」との組み合わせが必要になります。freeeよりは少し手間がかかるものの、API連携が可能なのである程度スムーズに作業を進められます。しかし、以下図のように価格がfreeeより高くついてしまうため、あえて選ぶ理由はありません。
freee | 弥生会計 | マネーフォワード | |
---|---|---|---|
本体 | 39,336円 (一人法人プラン) | 30,590円 (セルフプラン) | 39,336円 (スモールビジネスプラン) |
法人税申告 | 32,780円 (freee申告) | - | 40,810円 (法人税の達人 Standard Edition) |
法人税申告の作業 | ◎ freee内部だけで完結 | API連携できる 法人税申告サービス無し | ◯ API連携可能 |
合計 | 72,116円 | - | 80,146円 |
料金プランを見る | 料金プランを見る |
【注意点】楽天銀行との連携ができない
freeeを使うにあたって、ひとつ注意したい点があります。それは楽天銀行との連携に対応していないこと。(僕の場合はSBI銀行をメインで使っているのでセーフ)
2022年2月から楽天銀行との連携ができなくなり、入出金明細データなどを自動で取り込むことができないようになっていまいました。法人口座を楽天銀行で開いているのであれば、楽天銀行の取引を手動で読み込むか他の口座に変える必要があります。
楽天銀行の情報を都度入力するのも面倒なので、維持費無料で持てるネット銀行の法人口座を開いてしまうことをおすすめします。
維持費無料の大型銀行として有名なのはみずほ銀行ですがここ最近はトラブルが多く、安心して使える銀行とは言えない状況なのでGMOあおぞらネット銀行かSBI銀行が現実的です。
【まとめ】現状はfreeeほぼ一択の状態
結論、1年前にfreee会計を契約した自分に感謝する結果に。特に法人税申告がサクッと終わるfreee申告には本当に助けられました。
- 2024年7月よりマネーフォワードとfreeeの価格・機能はほぼ横並びに。弥生会計オンラインは少し安い。
- マイクロ法人の会計は、一番安い弥生会計オンラインの機能で十分足りている。
- freeeは楽天銀行と連携ができない点に要注意。
- 税理士無しで法人税申告を済ませられる機能がfreeeにある。(有料だが税理士を雇うより圧倒的に安上がり&時短)
「freee会計の一人社長プランを年間契約(39,336円/年)で会計を自力で済ます」+「freee法人税申告(32,780円)で税理士を雇わず短時間で法人税申告」
手間とお金の両方の視点から見て、これが現時点での最適解です。これからマイクロ法人の会計ソフト選びで悩んでいる方の参考になると幸いです。
これから法人を設立するならfreee会社設立を使うとラク
自分の場合はフォームに情報を入力するだけで勝手に定款など会社設立に必要な色々な書類を作ってくれる「freee会社設立」を使って、そのままfreee会計に移行しました。
もし法人設立がこれからなのであれば、このfreee会社設立も使うと楽なのでオススメしておきます。
サービス自体は無料ですが、使えばもちろん「freeeで会計しませんか!?」といった営業電話が1度はかかってくると思った方がいいです。というか自分には実際にかかってきました。
【おまけ】マイクロ法人と個人事業主 二刀流の憂鬱
ちなみに自分の場合はマイクロ法人と個人事業主とのいわゆる二刀流。「二刀流にすると節約になるぞ!」というのが二刀流の触れ込みなのに、会計ソフトはそれぞれ別でお金を払って契約する必要があります。
ただ2つのクラウド会計ソフトを契約してお金を払い続けるのが嫌だったので、今回紹介したマイクロ法人は普通に年間契約して、個人事業主は確定申告のタイミングだけ1ヶ月間freeeを契約して申告作業を済ませてしまいました。
僕の場合は個人事業主の取引が月3~5個程度しかなかったので1年分を入力するのは難しくなかったですが、頻繁にお金が動くような働き方の人は別のやり方を考えたほうが良いかもしれません。
二刀流の会計についてはもっと良い方法が無いか模索しながら次期の仕事に取り掛かっていきます。