フォント選びはデザインの印象や可読性に大きな影響を与える地味ながらも重要な部分。
この記事では、フォントの種類と選びかたをできるだけ簡単に理解できるよう、解説を構成します。
そのため、様々な種類のフォントを時系列にとともにまとめていきます。理由は、歴史的背景とともに学ぶことでフォントの与える印象の理由を分かりやすく理解できるうえに、記憶にも残りやすいから。
細かい国名や人名などは控えめにしながら噛み砕いて解説するのでご安心ください。
英文フォントの種類
まずは英文フォントを登場した時系列順にまとめていきます。
ブラックレター
まず最初は15世紀、初めて活版印刷が登場した時代。効率的に印刷するために最初に生み出されたフォントがこの「ブラックレター」です。
The New York Timesのロゴが有名ですね。
手書き風をベースとしながらも太い縦線が特徴的。
現代ではかなりクセの強いフォントとして扱われることが多く、ファンタジーやブラックレターが登場した中世の世界観を取り入れたいときなどに活躍します。
ブラックレターの中にはいくつかの分類があるのですが、使われる機会自体があまり多くないのでここでは省略します。
セリフ体(ローマン体)
ブラックレターをより読みやすくするために開発されたのが「ローマン体」。文字の端っこに装飾的なものがついていることが特徴で、この部分を「セリフ」と呼びます。
転じて現代では、「セリフ体」と呼ぶのが一般的になりました。
セリフ体の元ネタと言われているのが、紀元前に石碑に彫られた文字と言われています。イタリアの「トラヤヌス帝の碑文」は特に有名で、これを再現したフォント(Trajan Pro)もあったりします。
セリフ体はその歴史の古さから格式を感じさせる力を持っており、新聞や保険など信頼感を想起させたい場面や、ハイブランド品など高級感を演出したい場面で活躍します。
セリフ体をもっと詳しく
セリフ体は15世紀後半から長く使われきていることもあり、様々な見た目のセリフ体が流行しました。
- 15世紀後半:ヴェネチアン・ローマン
- 15世紀後半:オールド・ローマン
- 18世紀後半:トランジショナル・ローマン
- 18世紀後半:モダン・ローマン
時代が経つにつれて徐々に細いところがより細く洗練された雰囲気になっていることが分かります。これは印刷技術の発展によって細いパーツも印刷できるようになったことで実現できるようになりました。
こうした時代背景から、セリフの部分から受ける印象にも影響を及ぼします。
- 太い曲線の「ブラケットセリフ」は伝統的な印象
- 細い直線の「ヘアラインセリフ」はモダンな印象
サンセリフ体
時は少し進んで19世紀。産業革命がフォントの世界にも変化を起こします。
産業革命の「より効率的に無駄を省いて生産する」そんな価値観の中で生み出されたのが「サンセリフ体」。セリフ体から装飾的なセリフを取っ払ったため、フランス語で「無い」を意味する「サン」が頭について「サンセリフ」となりました。
サンセリフ体のフォントは見た目や背景によって大きく以下の4種類に分類されています。
サンセリフ体1 - 「グロテスク・サンセリフ」
最初に作られたサンセリフ体が「グロテスク・サンセリフ」。セリフ体が出てまだ時間が経っていない頃のフォントだからか、少し大雑把さを感じやすい見た目になっています。
Franklin GothicやDINが有名。特にDINをリニューアルしたDIN Nextは東京オリンピックのフォントとして使われています。
機械的な設計で無骨な印象を感じられます。力強さが前に出やすく、文字を目立たせたい時に候補に上がるフォントです。
次に紹介するヒューマニストサンセリフと比べて見た目が整っていない=グロテスクという覚え方をしています。ただし、この「グロテスク」はの由来は諸説あり、一般的な「気味悪い」とは違うともいわれています。
サンセリフ体2 - 「リアリスト・サンセリフ」
その後、ちょっと無骨すぎたグロテスクをもう少し読みやすく整えた「リアリスト・サンセリフ」が登場。「ネオグロテスク」とも呼ばれます。
とても汎用性が高く、様々な場面で見かけることができます。リアリスト・サンセリフに分類される中でもHelvecicaは特に普及しているフォントですね。
個人的には読みやすさ(リアリスト)とかっこよさ(グロテスク)が互いに少しずつトレードオフになっているように感じます。
サンセリフ体3 - 「ヒューマニスト・サンセリフ」
セリフ体をベースにしながらも、太さや抑揚を変えることでより自然で人間味のある見た目になったのが「ヒューマニスト・サンセリフ」。
無難で親しみを感じられるものから高級感あるものまで、ヒューマニストサンセリフの与える印象はフォントによって幅広いです。ただ全体通して言えるのは、違和感なく読みやすいこと。
GillSansやMyriadが有名です。
サンセリフ体4 - 「ジオメトリック・サンセリフ」
丸、直線などの図形のような組み合わせで構成され、幾何学的な雰囲気が漂う「ジオメトリック・サンセリフ」。実際には全てが完全な円や直線で作られているわけではなく、人間が読みやすいように微調整が加えられてているものが大半です。
「デザインされている感」が強く、ブランド品のロゴなどでよく使われます。直線と円で構成されたFuturaはLOUS VITTONのロゴで有名ですね。
フォントの選び方
ここまでで英語フォントの種類や傾向をざっくりと紹介しました。
ここからはどのようにしてフォントを選定するのか、大切な要素をピックアップして紹介します。
- 文字の読みやすさ(可読性や視認)
- 文字のデザイン
文字の読みやすさ(可読性・視認性・判読性)
セリフとサンセリフどちらを選ぶか以前に一番大切にになければならないのが、文字の読みやすさです。
いくらかっこいい/おしゃれな文字を使ったとしても、その文字が読めなければ意味がありません。
例えば、「I(大文字アイ)」と「l(小文字エル)」の判別。セリフ体ならこの判別がつきやすいですが、サンセリフだとただの棒になってしまいます。
お次に文字の太さ。細いフォントは近未来的な印象を与えることができますが、太い文字と比べると読みづらくなってしまうため、文字の大きさや文字を読む距離に気を使って絵上げる必要があります。
そのほかにも文字の読みさすさを左右する要素は山程あります。文字の色、大きさ、字間、行間など様々な要素を天秤にかけながらフォントを選びたいですね。